pHのはなし:ガラス電極と比較電極
ガラス電極は、ガラス管の先端にpHに応答する特殊なガラス膜を備え、その内部は一定濃度の内部液と、安定した起電力を発生する内部電極とで構成されています。ガラス膜は厚さ0.1〜0.3mm、φ10程度の球状の薄い膜であるため破損しやすく注意して扱う必要があります。
pH測定は、ガラス膜での起電力変化のみを検知しないと正しく測定されないので、比較電極は、どのような液においても一定の起電力を維持し、安定であることが必要条件となります。
このような条件で選択され使用されているものとして、銀−塩化銀内部電極、3.3mol/L・KCl溶液、または、飽和KCl溶液の内部液が用いられています。
比較電極の先端には、被測定液と電気的接続を保つために液絡部が設けられています。液絡部は、電気的接続を保つとともに内部液がわずかずつ流出することが理想とされています。液絡部の材質として一般的には多孔性セラミックが用いられますが、用途に応じてガラスのすり合わせを液絡として利用したスリーブ型液絡部があります。
液絡部は微小な流路を液が通過するため、電気化学的な原理により通過する陰イオンと陽イオンの移動度差による液間電位というものが発生します。この発生が非常に小さいものとして前述した塩化カリウムがあり、そのために内部液として採用されています。被測定液と接すると、液絡部内には拡散作用により被測定液も少しずつ入ってくる傾向があります。被測定液が液絡部に蓄積されると、液間電位が発生し、測定上の誤差となります。液絡部をKCl溶液で常に満たすためには、内部液の流出を多くすれば効果的ですが、多くしすぎると内部液が早く減少し、KCl溶液
が被測定液に入り込みすぎてpH濃度にも影響する場合があるため、適度な流出のある条件を見い出して液絡部材を選定しています。
液間電位は、被測定液により異なり、また液絡部の履歴的汚染などにも影響されるため、理論的に明示することは困難です。そのため、液絡部に発生する電位は、理論的な液間電位、液絡部の汚れなどにより発生する電位を含め、液絡部電位と総称しています。
精度の高いpH測定をするには、この液絡部電位の発生を低く押さえることがポイントとなります。